「全社員にChatGPT配布」が機能しない理由
はじめに
「全社員にChatGPTのアカウントを配ったが、ほぼ誰も業務で使っていない」。最近、経営者の方からこういう相談をいただくことが増えてきました。
私自身、複数の中小企業で同じ場面を見てきています。配ったこと自体は悪くないのですが、それだけで業務に組み込まれることはほぼないというのが実態です。なぜそうなるのかを、判断軸として整理してみます。
「配布だけ」で止まる構造
配布されたアカウントが業務に組み込まれない会社には、共通点があります。
ひとつは、用途が決まっていないこと。「便利らしいから使ってみて」と渡されても、現場は何の業務に当てればいいか分からないまま終わります。「使い方が分からない」のではなく「何に使えばいいか分からない」が本質です。
もうひとつは、効果を確認する場がないこと。月次会議でAI活用の話が出ない会社では、誰がどう使っているかが共有されず、結果として誰も使わない状態に戻ります。
そして、リーダーが使っていないこと。経営者・部長層が自分で触っていない会社では、現場が触ってもフィードバックが返らず、定着しません。
どこから手を入れるか
このパターンを抜けるには、配布の順序を変える必要があります。
まず、AIを当てる業務を絞る。全業務に開放するのではなく、月10時間以上かかっている定型業務を3つだけピックアップして、そこに集中します。議事録、提案書、リサーチあたりから入る会社が多い印象です。
次に、パイロット部門と責任者を決める。全社一斉ではなく、最初は1部門・5名程度で回します。責任者は「使い方を教える人」ではなく「業務に組み込む責任を持つ人」を置きます。
そして、月1回の振り返りリズムを作る。何の業務に何時間使ったか、結果どうだったかを30分でいいので共有する場を設けます。これがないと、活用は属人化したまま消えていきます。
意思決定のための3つの問い
御社が今、AIアカウントの配布を検討している、あるいは配布済みで使われていない状態にあるなら、以下の3つを確認してみてください。
- どの業務をAI化するか、3つに絞れていますか?
- パイロット部門と、そこの責任者は決まっていますか?
- 月1回、AI活用の振り返りをする会議体はありますか?
3つ揃っていない状態で全社配布だけを進めると、コストばかりかかって何も変わらない、という結果になりやすいです。
逆に、この3つが揃えば、最初の3ヶ月で目に見える時間削減が出てくる傾向があります。これは、私が伴走してきた中堅企業(従業員40名規模)の管理部門で、実際に起きていることでもあります。